世界は新たな方向へ、急激に廻り始めた。
砂漠の王には、時折訪れる親友たちが居た。その友たちから届く便りに頬を緩めては仲間たちからからかわれる、ということを繰り返し、立派に王を務め上げて、笑って死んでいった。仲間、子供、孫たち、そして駆けつけた親友たちに看取られて、幸せそうな大往生であった。彼の孫たちは今も、彼の親友たちと交流を続けている。
黒髪・黒目の夫婦は、共に旅をするうちに、妻に新しい命が宿ったことに気が付いた。のどかな海辺の町で出産に備えるらしい。
紫がかった黒髪・黒目の麗人は、今も独りで旅をしている。大嫌いなはとことたまに遭遇して遊ぶのを楽しみに、各地を放浪している。そして剣の修行の傍ら、今度生まれるという従兄弟たちの子のために、小刀で木を削り、細工物や玩具を作り始めた。そういうときの彼は、穏やかに微笑んでいるという。
そして、首都では。
若干26歳にして即位した三十二代目の法王が、謎の二人組みに攫われるということが一度といわず結構な回数、あった。大事件のはずなのだが、法王はそのたびに楽しそうな笑顔で帰ってくるので、教会内ではある意味行事の一種のようになっていた。
空色の瞳と髪を持つ長身の法王は、穏やかで芯の強い、誠実な人物だった。前代の王と共に、広く異教徒を認め、共存しあう道を示した賢王として歴史に名を残すことになる。その葬儀には、黒髪と銀髪の二人の美しい旅人が、ひっそりと参列していたという。
広く大きな世界の中で、多くの運命は、確かにそこに在った。
そして今も、これからも
それぞれの信じるものを胸に、またどこかで
いくつもの運命が、出逢う。
〜belief・完〜