●紅葉商店戦記●
〜第一話『牛乳ブルース』〜
・紅葉商店の人々・
●ハラダ ヨウヘイ(26)・・・米屋の次男坊。サラリーマンの兄に代わり店を継ぐため日々修行中!気さくで明るい米屋のオニイチャンは、実は商店の平和を守る「米屋仮面」なのだ!!
●ヤマノ カツエ(28)・・・ヨウヘイにスカウトされてあまりの押しの強さに思わず「人妻ヴァイオレット」になることを承諾してしまった主婦いや人妻(こだわり)。容姿端麗頭脳明晰人柄完璧。皆のアイドルDA!!
●サクラダ シロウ(27)・・・酒屋。ヴィジュアル的容姿に自分でも酔ってるナルシスト。でも何故か「酒屋ワインレッド」。皆を守るとかそういう目的は無いだろう。ヒーローに憧れるちょっと少年っぽい自分にめろめろ(死語)。米屋仮面に一方的にライバル視されている。ライバルもいるヒーローの自分、に更にくらくら(古語)。
●サカグチ アキラ(25)・・・素直で仕事熱心な愛すべき魚屋。子供っぽく、ヨウヘイと仲がイイ。食卓の平和と商店の皆を守る為、「鮮魚ブルーレット」となる。「主人公はレッド、でも魚と言えばブルー」という葛藤の末、この名称に落ち着く。決して置くだけではない。
『紅葉商店戦記』
〜第一話・牛乳ブルース〜
ここは、紅葉商店街。その何となく風情はあるがさびれてるとも受け取れる名称に相応しい、何ともひなびたアーケード街である。しかし、そこに住む人々の目は明るい。老いも若きも皆、働くことが楽しいという目をしている。街の人々は、自分たちを「紅葉商店」という一つの大きな店の一員だと言っていた。
これは、そんな街を愛する者たちの戦いの記録である。
「おじさん、今日和!配達に参りました〜!」
「おお、いつもスマンねぇ」
紅葉商店の一角。「ハタケヤマ牛乳」に、一人の青年が米袋を担いでやってきた。彼の名はハラダ ヨウヘイ。米屋である。
「良いんですよ。それより腰の具合はどうです?」
彼は人柄も良く、働き者で、中々の好青年。おかげで主婦に大人気である。
「だいぶ良いよ、ありがとな。しかしねえ・・・」
ハタケヤマ氏の顔が曇る。
「満開、ですか?」
「ああ・・・」
スーパー満開。紅葉商店からさほど離れていない位置に新しく出来た、大手スーパーである。紅葉商店の人々にとってはどうしようもない強敵だ。
「頑張りましょうよ、ね?」
「・・・ん、そうだよな!いっちょがんば・・・」
「きゃーーーーっっっ!!!」
ハタケヤマ氏の声が掻き消えるほどの悲鳴が、突如として上がった。
「何事だ!!?」
ヨウヘイとハタケヤマ氏は声のした方へ駆け出した。既に人だかりが出来ている。その中央に、胸に「MILK」と白文字の入った全身黒タイツという何とも何ともな格好をした一人の怪人(変人)が!!
「フフハハハ!!さあ飲むが良い!!これが満開の牛乳だ!!」
牛乳の路上試飲会を行っている!!
「何てこった!!あんなのされちゃウチの商売あがったりだよ!!」
悲鳴を上げるハタケヤマ氏に、ヨウヘイは力強く言った。
「待っていて下さい!すぐに彼を呼んできます!!」
「か、彼?」
「こういう時は彼を呼ぶんです・・・ヒーローを、ね」
「!!米屋仮面・・・!!」
ヨウヘイはぐっと親指を立ててみせると、マッハの速さで何処かへと走り去って行った。
「さあさあ!飲むが良い!!カルシウムたっぷりカロリー控えめオマケに安い!!これが満開の牛乳だ!!」
更に調子に乗って試飲をすすめる怪人(変人)に、安いもの好きの主婦が群がっている!!どうする、このままではハタケヤマ氏(47歳。今年上の娘が高校卒業)が危ない!!
「ちょぉぉっっと待ったぁ!!!」
そこに現る一つの影!!
「な、何奴!!?」
「ふっ。悪党に名乗る名など無い!」
「じゃあ聞かない」
「だが人は呼ぶ!!」
「いやだから聞いて・・・」
「紅葉商店の白い疾風・米屋仮面と!!」
白いマントをなびかせ白い仮面を被ったその人こそ、我らがヒーロー・米屋仮面(以下、米)だったのだ!!
〜以下、戦闘開始!!〜
怪人(変人・以下、怪):「ふん、貴様か。最近ウチの邪魔をしている白いヤツってのは」
米:「どうせなら紅葉商店の白い悪魔と呼んでくれ(目がマジ)」
???:「じゃあ僕のことは、差し詰め“紅い流星”、かな・・・」
米&怪:「な、何ヤツ!!?」
紅い流星(仮):「いや・・・やっぱり薔薇の方が僕に相応しいかな・・・」
米:「はっ!お前は・・!!」
怪:「知っているのか!?」
米:「ああ!あの嫌味な顔、無意味な薔薇、“・・・”を多用する喋り!ヤツが、悔しいけど女子高生を中心に大人気の・・・」
紅い(以下略):「酒屋ワインレッド、とは僕のことさ・・・」(以下、酒)
米:「おのれ!何の用だ!」
酒:「君と同じだと思うけど・・・ふぅ」(ため息)
周りの女の子たち:「きゃーーーVvvワインレッド様素敵〜〜〜Vvv」
米;「ぐぐっ!」
???:「あ、あの、遅れました、すいません;こちらで宜しかったですよね?」
米:「はっ!この何ともおしとやかなのに艶っぽいこのお声は!!」
怪:「し、知っているのか!?」(ドキドキ)
???:「あ、あの、初めまして。ひ、ひとづ・・・人妻ヴァイオレット、です・・・いやん恥ずかしい///」(赤面)(以下、妻)
〜人妻ヴァイオレットは、際どいスリットをかなり気にしてもじもじしている!!〜
米&怪:「(ブーーーーッッ!!)」(鼻血)
酒:「おや・・・初めまして・・・」(薔薇を差し出す)
妻:「まあ、綺麗な薔薇!ありがとうございます」
米&怪:「ぐぐっ!(おのれ酒屋め!!)」(漢たちは気持ちが一つになった!)
???:「ちょぉ〜っと待ったあ!!」
怪:「む!?新手のス●ンド使いか!?」
???:「天が呼ぶ地が呼ぶ海が呼ぶ!美味しい魚が俺を呼ぶ!!鮮魚ブルーレット、ここに見参!!」(以下、魚)
酒:「なんだ置くだけか・・・」
魚:「違えって!!」(怒)
妻:「あ、ウチはタンクに入れるだけのですよ」
酒:「奥さん、奇遇ですね・・・実はウチも・・・」
米:「じ、実はウチも!!」
魚:「もういいよ!それよりどこだよ牛乳怪人!!(今命名)」
米:「あっ!そうだった!牛乳怪人、ここで試飲会は止めてもらおうか!!」
怪:「ふん!安い牛乳は消費者の為でもあるんだ!文句を言われる筋合いはない!」
酒:「???牛乳が飲めないのなら・・・ワインを飲めばイイじゃないか・・・」
魚:「(酒屋は無視!)うるせえ!!牛が泣いているんだ!酪農家が泣いているんだ!!」
酒:「ああ・・・CMでやってたね・・・」
妻:「ん〜・・・でも確かに安いのは嬉しいです・・・ウチの主人、よく飲みますし。ああでも美味しくないとダメですよ」
怪:「では、飲んでみるがいい!!」
妻:「いただきます」
怪:「お前らも文句を言う前に飲んでみるがいい!!」
魚:「おう!飲んでやらあ!!」
米:「俺は飲まん!」
酒:「僕はワインしか・・・」
(ごくごくごく・・・)
魚:「うっ!?こ、これは・・・!!」
妻:「あら、美味しいですね〜」
怪:「フッハッハッハッハッハ!!安いぞウマイぞ美味しいぞ〜!!」
魚:「ち、チクショウ!!ウマイと美味しいは同義語なのに文句が言えねえ!!」
米:「くっ!こうなったら“小学生作戦”だ!ブルーレット、行け!!」
魚:「おう!・・・おい牛乳怪人!!」
怪:「ん?何だ?」
魚:「お前牛乳臭えんだよ!!」
酒:「そういう君は・・・生臭いよね・・・」
魚:「!!・・・し、潮の香りだ!!」
米:「無茶言うなよ」
魚:「そ、それにお前!!お前は酒臭えよ!」
酒:「おかしいな・・・薔薇の香りがするはずだが・・・」
米:「するか!!」
酒:「君・・・君は、ああ、あれだね、米ヌカの匂い・・・」
米:「何!?それは喜んでいいのか悪いのか!?」
妻:「私、米ヌカ石鹸を使っておりますよ?(ニッコリ)」
米:「・・・オールO.K!!」(ガッツ!!)
怪:「おい!結局どうしたいんだ!!」(←放っとかれて不安になってきたらしい)
酒:「・・・あのさ・・・」(ジロリ)
怪:「な、何だ!?」(ビクッ!)
酒:「僕・・・牛乳を吸った雑巾の臭い、大嫌いなんだよね・・・」
怪:「!!」
妻:「あ!分かります!!あれ、最悪ですよね!!」
怪:「!!!!いやあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
(怪人、泣きながら走り去る!!)
魚:「・・・イヤな思い出でもあったのかな・・・」
米:「いや・・・男としてショックだったんだよ・・・(泣)」
妻:「???」
酒:「あ・・・あそこでハタケヤマのおじさんも泣き崩れてるよ・・・」
米:「!!ノオォォォォ!!」
魚:「任せとけ!・・・おじさん!」
ハタケヤマ(以下、ハ):「・・・最悪って・・・最悪って・・・」
魚:「おじさん!元気出しなって!ホラ、おじさんトコの牛乳、美味しいじゃん!」
妻:「そうですよ。ビン、持っていくと10円返して下さるし。あれ、スゴク嬉しいんですよ?」
ハ:「そ、そうかい?」
米:「そうそう!それに大きいのはパックじゃなくてフタ付き容器ですよね!あれなら倒しても零れないから雑巾に吸わせることもないですよ!!」
酒:「ああ・・・それなら、いいよね・・・」
〜その後、「ハタケヤマ牛乳」のフタ付き容器入りの牛乳が大人気になったらしい。
やったぞヒーローズ&ヒロイン!!今日も紅葉商店の平和は守られた!!行け!米屋仮面!走れ!鮮魚ブルーレット!微笑え!人妻ヴァイオレット!酔え!酒屋ワインレッド!
紅葉の平和は君たちの手に!!
〜「紅葉商店戦記」第一話・完〜
●後書き●
ごめんなさいすいませんもうしわけありませんさようなら。