彼はとある大手っていやあ大手の企業に勤めるサラリーマン(営業課所属)である。成績はまあまあ。しかし憎めない人柄で好感度は大。普通に幸せな家庭を築き、普通に幸せな人生を送っていくだろうと神さまも思っている。しかし、そんな彼にも一つだけ、普通と違う所があった。それは彼自身も知らない事だが・・・
奥様は、ヒロインだったのである。
「カツエがさあ〜〜〜〜Vvv」
「おいおい、またかよ」
お昼の紅葉商店街。その一角にある安い中華料理店『エノモト』で、彼は同僚と昼飯をかっ喰らっていた。ヤマノ ヒロシ、28歳。彼の口癖は「カツエがさあ〜〜〜〜Vvv」である。幼稚園の時からずっと一緒だった美貌のカツエ嬢と結婚して早2年。一日たりともノロケを欠かしたことは無い。
「何でお前みたいなのとあのカツエさんがくっつくかね・・・」
「ん〜Vvvやっぱそこがカツエのスゴイとこなんだよお〜Vvv」
「・・・お前、自分が何言ってるか分かってるか?」
「?幸せってことだけど?」
「・・・もお、いい」
「え?まだ話し足んねえよ〜v」
「止めろってば!」
もっとも、そこで話し終わらないのがヒロシである。まあ何時もの事なので同僚(アベ ケンイチ・28歳)も黙って聞く他ない。
「でさあ〜vカツエがさあ〜〜〜〜Vvv」
「きゃーーーーーっっっ!!!」
永遠に続きかねないノロケを打ち破ったのは、若い女性の悲鳴だった!!
「な、何事だ!!?」
「!!カツエが近くに居る気がする!!カ〜ツエ〜〜〜!!!」
「おい!?何で分かんだよ!!?」
急いで店を飛び出したヒロシの分の金も払って、ケンイチも外に飛び出した。そこには、いかにも「ワタシ、中国人アルヨ〜」の日本人丸出しな怪しいオヤジと、紅葉の戦士・米屋仮面が居た!!
〜以下、戦闘開始!!〜
米:「おい、エセ中国人!!エノモトさんちの前で宣伝とは、いい度胸だな!!」
怪:「何アルか〜。ドコで宣伝しよとコチの勝手ネ」
米:「む、むかつく!!そのエセ中国訛りむかつく!!!」
酒:「少し、待ってくれないかな・・・」
米:「むっ!この更にむかつく声は!!」
酒:「君に嫌われるのは構わないけど・・・ワインレッド、参上」(キラーン☆)
周りの女の子たち:「きゃ〜〜〜Vvvワインレッド様ぁ〜〜〜Vvv」
米:「〜〜〜〜〜!!!!!」(声にならない怒り)
魚:「ちょおおおおっっっと待ったああああ!!!」
怪:「ム!何者ネ!?」
魚:「燃える拳は誰のため!!それは世のため人のため!!鮮魚ブルーレット、ここに見参!!」
酒:「やあ。君は・・・今日も元気だね・・・」
魚:「へへっ、毎度!」
妻:「今日和〜。あら、今日は中華料理なんですね・・・あ」
〜穏やかに現れた人妻は、疾走中のヒロシの姿を見つけた!〜
米:「奥さん?どうしました?」
妻:「え、ええ〜と、その・・・」
ヒロシ:「カツエ〜〜〜!!ここは危険っぽいぞ〜〜〜!!逃げるんだ〜〜〜!!」(妻に危険を報せるため、ヒロシ走り去る)
ケンイチ:「おい、待てってば!何処行くんだよ!?」(その子守り)
妻:「・・・あの人ったらv」(ポッv)
米:「〜〜〜〜〜〜〜!!!!(ギリギリギリギリ・・・)」←声にならない嫉妬
魚:「???まあ、取り敢えず中華怪人!!ここから立ち去ってもらおうか!!」
米:「そうだそうだ!!」
怪:「フン!ウチの料理、こんな店違て美味アルヨ。オマケにメニュー豊富、価格安心、非の打ち所無いアル!」
魚:「うるせえ!!エノモトさんちは安くて安くて安いんだ!!」
怪:「安いだけアルか?」
魚:「り、量も多くて学生とリーマンの味方だ!!」
酒:「・・・雑誌の入荷も早いよね」
米:「備え付けの紅しょうがとか食べ放題だしな!!」
妻:「あの〜・・・」
米:「はい?」
妻:「どうして、お味の方は」
魚:「ストップ!!」(目が必死)
怪:「フフン!はっきり言って不味いアル!ウチとは比べものにならないアルネ!!」
米:「そ、そこまで不味くないぞ!!(・・・美味くもないけど)」
酒:「大体、君の所の料理を食べないことには比べられないな・・・」
怪:「じゃあ、食べるが良いヨ!」
〜中華怪人はアツアツのゴマ団子を取り出した!!〜
米:「(う、美味そう・・・!!)」
怪:「揚げたてアル〜!さあさ、お一つ如何?」
妻:「まあ。頂きます」
魚:「ああ喰ってやる!」
米:「ど、どうしてもと言うのなら喰わんこともない!」
怪:「じゃあ別にイイアル」
米:「どうしてもと言え」(目がマジ)
酒:「さて・・・比べてみようか」
〜試食中〜
魚:「う・・・!!これは・・・!!!」
妻:「〜〜〜!!美味しいです〜〜〜Vvv」
米:「もう一個喰ってやらんでもない」
酒:「成る程・・・確かに、美味しいね・・・」
怪:「ふっふっふっふっふ。勝敗は明らかアルネ!!」
米:「くっ・・・!!出来ればこれだけは言いたくなかったが・・・!!」
魚:「!アレを言うのか!?」
酒:「・・・一か八か、だね・・・」
妻:「?」
米:「え、エノモトさんちの日替わり定食はなあ・・・個性溢れる創作中華なんだぞ!!」(ババーン!!)
魚:「あああ!!言っちまった!!!」
酒:「仕方、ないよね・・・(遠い目)」
妻:「???」
怪:「フン、それがどしたネ?」
米:「よく罰ゲームに使われる!!(血眼)」
魚:「不思議体験が味わえる!!!(血涙)」
酒:「とってもミステリアス・・・(苦悩)」
怪:「・・・・・・・・・・・自爆アルか?」
米:「言うな」
妻:「ええ〜と・・・例えば、どんなのですか?」
米:「白身魚と生クリームの・・・うっ!(思い出した)」
酒:「間違ってるよね・・・よりにもよって魚と・・・」
魚:「でも魚を食べると頭が良くなるんだぞ!!」
酒:「・・・(しばらく思案)それ、きっと嘘だね」
魚:「何でだよ?」
酒:「だって・・・君、魚好きでしょ?」
魚:「そうだけど?」
酒:「・・・・・・・・・・・・」
米:「とにかく!そんな不思議な物が喰えるのはここだけだ!!」(やけっぱち)
怪:「・・・別に食べたく無いアル」
米:「言うなってば」
魚:「た、食べたい人だって、居るぞ!(多分)」
怪:「どんな変人アルか」
酒:「たまには・・・冒険したい時だってあるのさ・・・」
怪:「一生に一度で十分アル」
妻:「あの〜・・・」
怪:「何アルか?」
妻:「ウチの主人、エノモトさんのお店の常連です」
全員:「・・・え?」
妻:「お昼休みは大抵エノモトさんだって、言ってますよ」
米:「ほ、ほらほらほら!!勤め人の味方なんだ!!」
怪:「フン!ウチもリーマン向けのお昼の定食くらい用意してるヨ!」
妻:「それに、皆さん色々仰ってますけど・・・美味しいですよね?エノモトさんの」
全員:「・・・え?」
妻:「そういえば私、食べたことありました。時々主人がお土産に買ってきてくれるんです。美味しいですよねv」
怪:「な、何言うネ!尋常で無いヨ!」
妻:「?私中華料理ってあまり外で頂いた事ないんですけど・・・普通じゃなかったんですか?」
魚:「絶対違う!!」
妻:「あらまあ・・・でも大好きですよ?あのチョコバナナ苺ジャム添え炒飯・・・」
怪:「!!!!アイヤーーーーっっっっ!!!!」
〜中華怪人は真っ青になって口元を抑えて逃げ出した!!〜
酒:「・・・・・・・・・思いっきり想像しちゃったんだろうね・・・」
米&魚:「(うんうん)」←同情しつつ頷く
妻:「?」
〜一方その頃ヒロシとケンイチは〜
ヒ:「カ〜〜〜ツエ〜〜〜〜!!!」
ケ:「お、おい、ってば!!(ゼエゼエ)」
ヒ:「カ〜・・・ん?どしたのケンイチ?」
ケ:「(がっくし)・・・あのな、お前、何してんだよ?」
ヒ:「何って・・・決まってるじゃないか!悲鳴が聞こえた→ココらは危険→カツエの気配→カツエが危ない!→俺、報せる→カツエ避難→カツエ無事。・・・OK?」
ケ:「・・・(がっくし)」
ヒ:「お!でも何かもう安全っぽい感じがする!さ、会社に戻ろうぜ」
ケ:「もお、好きにしろよ・・・(泣)」
ヒ:「こら、泣いてちゃ営業できないぞ☆レッツ・スマイル!!」(キュピーン☆)
ケ:「(・・・・・・・・刺してえ・・・!!)」
とりあえず、ヤマノ夫婦の微妙な味覚で今日も紅葉の平和は守られた!!!(投げやり)行け!米屋仮面!走れ!鮮魚ブルーレット!進め!酒屋ワインレッド!舞え!人妻ヴァイオレット!紅葉の明日は君たちの手に!!そしてそんなヒロシに振り回されるケンイチの運命やいかに!!?(A:一生振り回される)
第五話・完
●ヤマノ夫婦はちゃんと美味しいものは美味しいと感じるんですがそのストライクゾーンが限りなく広いんです、きっと・・・あと今まで酒と魚に愛が偏っていたんですが、最近米も可愛いです。自分に正直で。