だいぶご無沙汰だがここは紅葉商店街。今日も今日とて中途半端に活気がある。そんないつもの町の風景にとって、異分子っぽい風貌なのに自然と調和する不思議な天然記念物が居る。その名を、サクラダ シロウ。両手に薔薇を抱えて歩く姿はどう考えたって勘違いさんなのだが、この町では既に日常の光景である。散らばる花びらに文句を言う人も、米屋の次男坊を除けば居ない(ちなみに、町を綺麗に、という今月のスローガンは彼の頭の中では「町に綺麗な薔薇を・・・」と一発変換されている。迷惑この上ない)。そんな彼が優雅な足取りで向かうのは、赤と青の螺旋が誘う「カツマタ理容・美容」。一階が理容室で二階が美容室になっている、昔ながらの店舗だ。当然、彼が向かうのは二階だ。
「いらっしゃ・・・まあv早かったわね、シロウさんVvv」
「やあ・・・リエさん、お久しぶり」
薔薇を渡しつつ挨拶すると、リエ嬢は満面の笑みを浮かべた。何を隠そう、彼女はシロウファンクラブ会員なのである(会員No.003)。
「ん”まあ!!シロウちゃんじゃあないかえ〜v」
「シロウちゃ〜〜〜んvvv」
今カットしていた客をほっぽり出して茶色い奇声と共に現れたのは、会員NO.001と002のスズ嬢(カリスマ美容師・御歳72)とその娘コマチ嬢(同45)である(ちなみに、リエ嬢はコマチ嬢の娘で、この三人はばっちり血が争えないというか繋がっている)。
「お久しぶりです、スズさん、コマチさん・・・薔薇をどうぞ・・・」
「んほほvんまあイヤだよこのコったらぁ〜v結婚したいだなんてv」
「言って無いって!このモウロクババア!」
「なんじゃとこのバカ娘!」
「やめなさいよ二人とも・・・」
「「五月蝿いわ小娘がっ!」」
「な・・・なによ〜!!若くて悪い!?」
「「きーーーっっ!!!」」
また始まった、と諦め気味の他の客と挨拶を交わしながら、シロウは何時もの如く大人しく待つことにした。
待つこと30分。とりあえず落ち着いたらしい3人が仕事に取り掛かり始めた。のどかな町である。
「じゃあシロウさん、今日はどうします?」
「何時もの様に薔薇と調和するような・・・」
「きゃああああ〜〜〜〜!!!」
その時突然、例によって悲鳴が!!
「あら?また満開かしら・・・」
「ふふっ・・・久々だ・・・」
シロウはケープを外すと、リエ嬢に渡しつつ立ち上がった。
「ちょっと悪いのだけど・・・待っていて、くれますか?」(キラーン☆)←当然ケープごと手を握りつつ
「はい・・・Vvv(めろりん)」
「では、また後で・・・」
シロウが優雅に店を出てすぐ、町の中心には紅いアイツの姿があった!!
〜以下、戦闘開始!!〜
酒:「さて・・・今日は何かな・・・?」
???「ふっふっふ、現れたな酒屋ワインレッド!!」
酒:「おや・・・知ってくれているとは光栄だね・・・で、君は・・・?」
???「ふふん!僕があのカリスマ美容師!満開のビューティー☆オカダだ!!」
酒:「・・・自分でカリスマとかビューティーとか、言わないほうが良いよ・・・」
〜酒屋は意味も無く髪をかきあげた!!〜
周りの女の子たち「きゃあ〜〜〜Vvvワインレッド様ぁ〜〜〜Vvv」
ビューティー☆オカダ「くっ!」
???「ちょおおおおおおおおおっっっと待ったあああああ!!!!!」
ビューティー(以下略)「むっ!?誰だ!?」
???「紅葉の白い守護神!米屋仮面とは俺の事だ!!」
ビューテ(略)「・・・どちらさま?」
米:「んなっ・・・!!(絶句)こ、こいつは知ってるくせに!!」
酒:「実力の差、かな・・・」
米:「(ビキビキビキッッ!!)」←血管ビシバシ
???「ちょっと待ったーーー!!!」
ビュー(略)「今度は誰だ!?」
???「困った時には飛んでいく!!哀しい時には駆けていく!!鮮魚ブルーレット、只今見参!!」
ビュ(略)「ああ、例の青いのか」
魚:「おう!俺が来たからには好き勝手させないぜ!!」
米:「(こいつも知ってるのにこいつも知ってるのにこいつも知ってるのに・・・)」←以下エンドレス
???「あ、あの〜、遅れてしまいました〜;すいませ〜ん;」
米:「はっ!この艶がありそしてなおかつ品のある美しいお声は!!」
???「あの、お久しぶりです。人妻ヴァイオレット、です・・・や、やだ、久々だと恥ずかしい(///)」
〜ヴァイオレットは久々の際どいスリット入り衣装にもじもじしている!!〜
米:「ブーーーーーーッッッ!!!」←鼻血ロケット噴射
ビ(略):「おお〜!!貴女があの、人妻ヴァイオレット・・・!!お会いできて光栄です・・・」
妻:「は、はあ・・・」
魚:「とにかく、え〜と散髪怪人!!ここで迷惑なマネはやめてもらおうか!!」
怪(結局こうなる)「ふふん!迷惑かどうかは、お客さんが決めるのさ!」
米:「うるさい!ここにはカツマタさん一家が営む理容室と美容室があるんだ!それで良いんだ!」
酒:「僕もカツマタさんのお店、好きだよ・・・」
魚:「うん!俺もいつもカツマタさんのおやっさんに切ってもらってるもんな!」
妻:「あ、私もお世話になってます〜」
怪:「ふっふっふ、なんて可哀想な人たちなんだ!世界は広いというのに!」
魚:「なんだよ!世界広しと言えども、寸分違わぬオバチャンヘアを量産できるのはスズさんくらいだぞ!」
米:「俺が初めて母さんカットから卒業してカツマタさんに切ってもらった頃も、クラス中同じ髪型になったもんな!!」
怪:「・・・それって嬉しい事なのか?」
米:「・・・び、微妙・・・」
妻:「で、でも、いつも素敵な髪型にしてくださいますよ?」
酒:「僕は、リエさん以外にはもう切らせないつもりだよ・・・?」
〜周りの女の子たちから嫉妬の叫びが上がった!!〜
怪:「ハッ!だからどうした!ウチのサロンは常に高い技術を維持し、最新の流行を取り入れつつもその人にあった髪型を提供している!もちろんダメージケアの相談や癖毛のお悩みにもバッチリ対応しっかり解決!常に貴方に満足を、がモットーの最高のサロンだ!」←良いなあ・・・(By;作者)
米:「でもカツマタさんは安くて早くて巧い!」
怪:「確かに値段はここよりも高いかもしれないが、しかしそれを補って余りある!」
魚:「でも俺的に入りにくいんだよ!こう、ぐわ〜って広くて綺麗で、若くてキザなスタッフがうようよしてるトコは!」
怪:「・・・君、若いのに・・・(ほろり)」
魚:「な、なんだよ!そんな目で見んな!」
妻:「ああ、でも、確かにカツマタさんのお店、気軽に入れますよね」
酒:「とても・・・フレンドリーだよね・・・」
魚:「いつも飴玉とかくれるしな!」
全員:「・・・(ほろり)」
魚:「な!?な、なんだよ!貰うだろ!?飴玉!!」
米:「俺は小学生の頃までだったなあ・・・(遠い目)」
酒:「二階の方もそうだったよ・・・(優しい目)」
魚:「そ、そんな目で見んなってば!!」
怪:「兎に角!こっちの方が入り易いってコも居るし、ポイントカード等のサービスもある!そちらは見た所、お客さんに年頃のコがいないようだが?」
米:「くっ!確かにカツマタさんの所は常連さんは殆ど子供か中、高年だが、逆に言えば若いコ以外は皆こっちってコトじゃないか!!」
怪:「ふふん!今必要とされてるのは、お洒落な若いコたちの為のカリスマ美容師なのさ!雑誌を見たまえ!流行に目を向けてみたまえ!!」
魚:「うるせー!流行がどうした!」
怪:「・・・君はいいから、ね?もういいから・・・(優しい気持ち)」
魚:「だーーーっっ!!何でだよさっきから!!」
妻:「あの〜、すいませんけど・・・」
怪:「何でしょう、奥さん?」
妻:「あの、カリスマって、どういう意味ですか?」
怪:「え?」
妻:「よく考えてみると、ちゃんとした意味を知らなくって・・・」
怪:「か、カカカカリスマとは奥さん、何と言いますか、カリスマ的と申しますか、支持されてるっぽいといいますか」
妻:「はあ・・・」
酒:「ふっふっふっ・・・」
怪:「何だ!?」
酒:「ふふっ、失礼・・・余りにも滑稽で・・・」
怪:「(むっかー!)なんだ!カリスマをフィーリングで感じていてはいけないのか!?」
酒:「物は言い様、だね・・・」
怪:「(うっ!)」
酒:「いいかい・・・?“charisma”というのは、人々を心服させる特別な能力、若しくはその持ち主のことで・・・そうだね・・・“教祖”的といえば、雰囲気が伝わるかな・・・?」
怪:「ふ、ふふん!其の程度の説明くらい僕だって・・・」
妻:「ああ、成る程!分かりました〜!流石はワインレッドさんですね!!」
周りの女の子たち「きゃあ〜〜〜Vvv流石ワインレッド様ぁ〜〜〜Vvv」
怪:「ぐっ!!・・・ち、チクショーーーーっっっ!!!」
〜怪人は泣きながら走り去って行った!!〜
魚:「おお!今日も万事解決だな!!」
米:「く、口惜しい・・・!!(ぎりぎりぎり)」
酒:「じゃあ、今日はこれで・・・解散?」
妻:「はいv」
〜そうして今日も、結局店の内容とは全く無関係な所で勝負はついた!!ちなみにカツマタ理容・美容はリエさんご指名の女子高生客が多くなり(「ワインレッド様専属カリスマ美容師リエさんにお願いします!」というコたちがわんさか)、若い顧客も増えて益々繁盛したそうな。行け!米屋仮面!!(益々影薄く)闘え!鮮魚ブルーレット!!(益々お子様)舞え!人妻ヴァイオレット!!(全くもってミラクル)酔え!酒屋ワインレッド!!(密かにリーダー色)紅葉の平和は君たちの手に!!〜
〜第七話・完〜
●カリスマについてのシロウの説明もどうかと思うぞ(他人事)。そして途中で投げ出したのが丸分かりですいません;(切腹)